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気づけばもう5月中旬となり、新年度になって既に1か月半が経過しました。
年度明けに多いものといえば、引っ越しではないでしょうか。
引っ越しをするにあたっては、新しい物件を探すために不動産業者へ行ったり、新居でのライフラインの契約を行わなければならなかったり、引っ越し業者に依頼しなければならなかったり、等々、いろんな「契約」が必要になります。
「契約」と聞くと、多くの方は不動産の売買や雇用契約などの重大な場面を想定されると思いますが、そこまで重要な場面ではなくとも、我々の日常生活の中に「契約」というのはごく身近に存在しており、皆さんも気づかないうちに「契約」を締結していることが多いのです。
そして、この「契約」というのは、法律の世界ではかなり大きな効力を持っていますので、今回はその一例を紹介したいと思います。
不動産業者へ行って新しい家の契約を行う際に、ライフラインに関するサービスやいわゆるサブスク関連のサービスについての案内がある場合があります。また、ライフラインの契約の際にメルマガなどへの登録の有無にチェックをする欄があったり、引っ越し業者を選ぶ際の料金比較サイトを利用するにあたってメルマガ登録が求められることがあります。
このような案内についてあまり深く考えずに適当にサインした結果、数日後からライフライン関係の業者からの電話、サブスク関連の業者などからのメールがたくさん来るようになって困ったという経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
いざそのような電話やメールが来た時になって「なんで勝手に情報が流れているのか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、これを正当化しているのが「契約」になるわけです。
不動産に関する契約だからその他の部分はどうでもいいと思って適当にサインした際のその「サイン」が、上記のライフライン関係の業者やサブスク関係の業者への情報提供に同意しているということになってしまったり、引っ越し業者の査定依頼の際に良く考えずにOKのボタンを押してしまったことにより、メルマガ配信の承諾に関するチェック欄にチェックが入ったまま「OK」を押してしまっていて、メルマガ配信に承諾したことになってしまっていたりします。その結果、情報提供に関する契約やメルマガ配信に関する契約も締結したことになってしまい、あなたの下へ様々な連絡が来ているというわけです。
これに対して「そんなものに承諾した覚えはない」と反論したとしても、契約書などに情報提供に関する欄がある場合には「あなたがちゃんと見ていなかっただけ」と一蹴されてしまうというのが一般的です。
簡単に言うと、「情報提供してもいいよと約束したのに、今更そんな約束はしていないと言われても困る」というわけです。
このように、「契約」というのは、一方による「申し込み」と他方によるその「承諾」によって成立しますが、日常的な取引においてはすべての事項を口頭で説明していては円滑な取引を阻害するので、契約書などに定型的に記載しておいて「契約者の方で読んでおいてください。そのうえで、特に問題がないのであれば、サインしてください。逆に言うと、サインしたということは問題はないということになります。」という形式を取っていることが多いだろうと思います。
だからこそ、「知らないうちに契約が成立していた」という事態が発生するわけですが、ある程度は契約者においてしっかりと契約書などを見ていなかったのが悪いと判断されてしまいます。ですので、日常生活において書面を交わしたり、何らかの申し込みをするボタンを押す際には、細かな部分にも注意してよく内容を確認してからサインをしたり、ボタンを押すようにしましょう。
もちろん、本来であればしっかりとした説明をした上でサインを求めるべきであったのに、その説明を行わずにサインをさせたという場合には、その契約が無効になったり取り消すことができたりするような場合も多々あります。
もし、この判断に迷ったような場合には、お気軽に当事務所へご相談下さい。
文責:弁護士 佐藤