争いごとや問題が生じた場合、どのようなことを考えて動けばよいのでしょうか。
一口に「争いごと」「問題」といっても種類は様々ですし、人によっても考え方は異なりますので一概に「こうするのがよい」ということは難しいですが、考え方の一例をご紹介できればと思います。
なお、以下では争いごと等に巻き込まれた側を「被害者側」、争いごとなどを生じさせた側を「加害者側」と言います。
まずは被害者側の場合です。
⑴この場合、まずは加害者側に対して請求を行うのか否かを決めます。
争いごとや問題が生じた場合、損害が生じたり、ある迷惑行為が行われていたりします。被害者側としては、自身に生じた損害の賠償を請求した
り、迷惑行為を止めるよう求めたりといったことを考えます。
この時、そもそも加害者側に対して請求を行うのか否かを考えますが、以下の点を考慮することが多いかと思います。
① 加害者側との関係性
例えば、親族に対してお金を貸したが返してくれなくなったという場合や隣の家の木の枝が邪魔であるという場合です。請求を行う場合、加
害者側が快諾してくれれば問題はありませんが、万が一快諾してくれない場合には加害者側との間で喧嘩をするような感じになってしまいま
す。日頃のやり取りを踏まえて「快諾してくれるだろう」と思っても、お金がからんだりすると態度が一変する方もいらっしゃいます。した
がって、最悪のケースを想定したときに、万が一加害者側と喧嘩になってもいいのかどうかを考えておく方がよいでしょう。
② 自身の今後の生活との関係
争いごとや問題が生じた場合、当人にとってはその争いごとや問題は非常に重要なことです。しかし、その争いごとや問題というのは既に発
生したことであり、その意味では過去のことです。我々にとって過去のことが重要であることは当然ですが、それと同程度に今後のことも重
要です。
争いごとや問題について、加害者側に対して何らかの請求を行うということは、加害者側が快諾してくれない限りは加害者側と争うこととな
ります。そして、「争う」ということは良くも悪くもそのことが頭の片隅に残ってしまいますし、労力も費用も掛かります。過去との向き合
い方は人それぞれですが、過去のことについてしっかりと清算した上で先に進む方がよい場合もあれば、場合によっては過去のことは割り切
って先に進んだ方がよい場合もあるでしょう。
例えば過去のことは割り切って先に進むという選択を取る場合、「泣き寝入りした」と捉えることもできますが、個人的には、そのような捉
え方よりは「手切れ金」として捉える方がよいだろうと思います。例えば100万円の請求を行うことができたけれども、その請求は行わず
に加害者側の人との関係をきっぱりと切ってしまうこととする、といった場合には「100万円を支払うことによって変な人との関係性を終
わらせることができた」と考える方が建設的であると思います。
ここの判断は結局のところ、法律上認められる請求を行うことと加害者側と喧嘩にならないことや自身の今後の生活を天秤にかけて、ご自身に
とってどちらがより大事かによって判断することとなると思います。
⑵次に、請求を行うと決めた場合には、その請求のやり方を決めます。
請求を行うという決断をした場合であっても、その請求方法についてはさまざまです。
請求方法には以下の段階があって、その段階の飛ばし具合によって加害者側が喧嘩を売られたと感じる度合いは高くなる傾向にあります。
基本的には、①から始めて、①で話が進まなくなったら②、②でもダメなら③、③でもダメなら④という流れを辿るのが穏当なやり方だと思いま
す。
この流れのうちのどこかを省略すると、省略する段階が多くなればなるほど喧嘩を売る度合いは高くなると考えてよいと思います。例えば、何か
問題が生じた時に、何の話し合いもなくいきなり裁判所から文書が届いた場合には「何だこれは!」と思う方が多いのではないでしょうか。
以上の流れのうち、どこから始めたらよいのか分からない、という場合には、弁護士に相談されるとよいかもしれません。
① 当人同士で話し合いをする。
この方法が最も穏当なやり方です。ただ、この場合でも言い方によってはかえって喧嘩を売る形になってしまうこともあるでしょう。
とりあえず当人同士で話し合いを行いたいと考えているが、どのように話を進めたらよいか分からない、どのように伝えて行けばよいのか迷
っているという場合には、その点についてだけ弁護士に相談する(事件全体について依頼はせずに、話の進め方などについてだけ相談してア
ドバイスをもらう)ということもできます。
② 当人名義で文書を送付する。
特に「内容証明郵便」で送付する方法を取る場合がこれに当たります。内容証明郵便というのは、通常の郵便とは異なり、自分が送った文書
の内容と加害者側に対して文書を送ったことの証明ができる形式で送る場合のことを言います。通常の郵便料金よりも郵送費用が高く、決ま
った書式に従っていなければなりません。
一般的に、このような文書を受け取ることは少ないので、このような文書を受け取った側としては「本気で請求してきている」と感じる度合
いは上記の「①」の場合よりも高まると言えます。
ただ、この場合には、自分が書いた内容についても残ってしまうため、万が一自分に不利になるようなことを書いてしまった場合には逆に利
用されてしまうこととなります。「話し合いだけでは進まないので文書を送りたいが、どのように書いたらいいか分からない」「そもそも書
式などが分からない」といった場合には、上記「①」と同様に、文書の作成や発送だけを弁護士に依頼するということも可能ですので、弁護
士に相談してみてもよいと思います。
③ 第三者に間に入ってもらう。
典型的な例は弁護士に依頼して加害者側と話をしてもらうケースです。
それだけではなく、弁護士ではない第三者(その争いごとや問題に関係のない人)に間に入ってもらうということもあり得るでしょう。例え
ば、加害者側と被害者側の双方の知り合いに間に入ってもらうなどです。
間に入ってもらう第三者と当人同士との関係性が薄ければ薄いほど加害者側に対する喧嘩の売り具合は高くなります。
とはいえ、やはり弁護士等の士業の人が間に入る場合というのは加害者側が受ける衝撃の程度は大きいといえます。その意味で、上記「①」
「②」の場合よりも加害者側に対して喧嘩を売る度合いはかなり高いといえます。
④ 裁判所に対して申立を行う
訴訟を提起したり、調停を申し立てたりする場合です。
この場合、加害者側に対しては裁判所から文書が届くこととなりますので、加害者側が受ける衝撃の度合いはかなり大きいといえます。
したがって、これまでの方法の中で最も喧嘩を売る度合いは大きいといえます。
以上より、請求を行わないという決断をした場合にはそれで終了です。
他方で、請求を行うという決断をした場合には、上記「⑵」のうちのどの段階から始めるのかを決め、各段階に応じて弁護士などに相談するという
ことがあり得るでしょう。
また、加害者側に対して積極的に喧嘩を売りたいわけではないが、喧嘩になるようなことはないだろうと(それなりの確証をもって)考えられる場
合には上記「⑵」の「①」から始めてみるということもあり得ると思います。
いずれの手段を取るにしても、請求を行うということは加害者側と喧嘩になるリスクを孕んでいるということを承知の上で、そのリスクをどこまで
受け入れることができるのかによって進め方が変わってきます。
また、各ケースによって喧嘩を売ることになること以外のリスクが生じてきたりもしますので、このあたりの判断は非常に難しい場合があります。
判断に迷った場合や何を考えて行けばいいのか分からない、そもそもどのようなリスクとメリットがあるのか分からないという場合についても当事
務所では相談を受け付けていますので、お気軽にご相談下さい。
加害者側については次回。
(文責:弁護士 佐藤優希)
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