ブログ

部下のミスを注意したらパワハラと言われる?上司が知るべき法的ルール①「上司と部下の仲が良い場合と悪い場合」

ブログサムネ
会社で働いていると、上司から注意される(怒られる)ということは日常的にあります。
また、会社を経営しているという場合でも、社員に対して注意しなければならない(怒られなければならない)場面というのは出てきてしまいます。
このような時。注意する側、注意される側、どちらにも「これってパワハラになるの?」と思う瞬間はあるのではないでしょうか。
近年では、パワハラ(パワーハラスメント)をはじめとして、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)など、多様なハラスメントが職場の問題として注目されています。
今回は「ミスをして怒られた場合、注意がパワハラになるのか?」について、注意された側である部下の視点から解説します。

上司から怒られた・・・これってパワハラでは?

「あ、やってしまった……」
重大なミスをしてしまった社員Aさん。やむなく上司に報告することにしました。
予想通り、「何やってるんだ!あれほど注意しろと言ったのになんでこんなミスをするんだ」と厳しい口調で注意を受けます。上司が怒るのももっともだと感じつつも、Aさんは心の中で思いました。
「確かにミスをしたのは自分の責任だけど、そこまで言う必要あるの?これって、もしかしてパワハラなんじゃない?」
自分のミスを認めているAさんですが、上司の言葉や態度がきつすぎると感じ、悩み始めます。このような状況、法律的にパワハラと認定される可能性はあるのでしょうか?

Aさんのケースについてパワハラと認定されるかどうかというのは、実は非常に難しい問題で、上記の情報だけで結論を出すことはできません。
「パワハラだと主張すればパワハラになる」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことはありません。
それでは、どのようにしてパワハラかどうかが判断されるのでしょうか。
パワハラについて定めた法律である労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、「パワハラ防止法」)では、パワハラについて「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される行為」であるとされています(パワハラ防止法30条の2第1項)。つまり、パワハラかどうかの判断において重要なのは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であることと、②業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、③その言動により労働者の就業環境が害されたこと、の3つであることが分かります。
そこで、今回の記事と併せて3つの記事で①~③について詳しく見ていきたいと思います(本記事では①について見ていきます)。

「優越的な関係を背景とした言動」とは?

この点については、これまでの裁判例において「業務を遂行するに当たって、言動を受ける労働者がその言動をした者に対して抵抗又は拒絶することができない可能性が高い関係を背景として行われる言動のこと」を言うとされています。
つまり、Aさんの例であれば、AさんはAさんの上司から注意されているわけですが、部下からすれば、上司に対して歯向かうと会社を辞めさせられるのではないか、今後の昇格に影響してしまうのではないか、社内に言いふらされていじめなどに繋がってしまうのではないか、などと考えてしまい、上司に対して抵抗することができないことが一般的です。
したがって、Aさんのケースでは、「優越的な関係を背景とした言動」には該当することとなります。
これが例えば、Aさんを注意した人物が、Aさんの1~2年先輩というだけで、役職などは同じ立場の人であるし、普段から仲が良く気兼ねなく発言することができるような関係性の人であるというような場合には、「抵抗又は拒絶することができない可能性が高い関係」ではないとなる可能性が高いため、「優越的な関係を背景とした言動」には該当しないこととなります。よって、そのような関係性の先輩から厳しく注意されても、パワハラには該当しないと判断されるケースの方が多いでしょう。とはいえ、例えば、普段は関係性が良好だけれども、注意する場面では先輩であることを盾にするような形で強く注意してくるため、日常的な場面と同じようにはいかない、という場合には「優越的な関係を背景とした言動」に該当することがあります。

②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えていること」については次回。
                                                       (文責:弁護士 佐藤)

CONTACT

お問い合わせ